2頭のコッカースパニエルと2頭の福島被災犬、1頭の保護犬を育てて考えた「ペットの医療と保険」

50代女性Sさんが、コッカースパニエルの「チェリーアイ」「若年性白内障」という眼病の治療に保険を利用した体験談と、福島の被災犬・繁殖業者からの保護犬を飼う際にペット保険加入を検討した時の体験談です。

真っ黒とクリーム色、2頭の仔犬(アメリカンコッカースパニエル)を飼うことに

以前に飼っていた犬が亡くなってから10年。

2009年6月、私の退職をきっかけに再び犬を飼おうと巡っていたペット販売店で、真っ黒のアメリカンコッカースパニエルに出会いました。

生後2ヶ月の仔犬は、既に予約が入っていましたが、「予約したのに迎えに来ないお客様より、可愛がってくださる方に飼ってもらった方が良い」と、その場で我が家の愛犬に決まりました。

その仔犬は、既に健康診断やワクチン接種を済ませ、1ヶ月のペット保険に加入していました。
1ヶ月後に「販売店から契約者変更して継続契約」か「契約解除」かを決めなければいけませんでしたが、深く考えずに契約者変更をしてその保険を契約しました。
「来実(くるみ)」と名付けた真っ黒くろすけは、やんちゃで賢く元気いっぱいでしたが、「1頭では寂しいかな」と思い、1週間後に同じ販売店を訪ねてみました。
すると、来実のちょうど1週間後生まれのクリーム色のアメリカンコッカースパニエルが待っていました。
その仔犬も飼うことになり、「美冠(みかん)」と名付けました。
2頭のアメリカンコッカースパニエルに振り回される毎日は忙しくも賑やかで、我が家に笑い声と元気をもたらしてくれました。
しかし、飼い始めた当初は、アメリカンコッカースパニエルは病気にかかりやすい犬だと全く知りませんでした。

犬も逆まつ毛になる?下瞼がピンク色になる「チェリーアイ」で手術することに。

生後半年程経ったある朝、美冠の右目の下瞼がひっくり返ったようにピンク色になって目ヤニが出ていました。
販売店で「チェリーアイ(第三眼瞼腺脱出)」の説明を受けていたので、すぐに動物病院に連れていきました。

診察の結果は、案の定チェリーアイとのことでしたが、先生の説明には驚きました。
「初期のチェリーアイは、オルカビットの点眼で治ることもあります。でも、美冠ちゃんは“逆まつ毛”ですね。」
「犬がサカマツゲ!?」と思わず笑ってしまいそうでしたが、笑い事ではありません。
点眼で改善しなかった美冠は、生後半年でチェリーアイの手術を受けることになりました。
朝ごはん抜きで病院に入院して昼に手術、夕方6時過ぎにお迎えに行ったときには、小さな体にエリザベスカラーがとても大きく見えました。

手術後は、点眼薬3種類と抗生物質の服薬を続け、2週間後には綺麗な眼になりました。
しかし、その後に左目も発症し、再び手術することになったのです。
この時、ペット保険に加入していたことは、何よりも救いになりました。
すべて実費で支払っていたら、両目の手術と投薬治療で合わせて5万円を超えています。
50%補償の保険だったので、1回の手術費用の自己負担額は1万円程に抑えることができました。
その後の通院も、保険を使うと50%負担だったので、安心して診察してもらう事が出来ました。

コッカースパニエルに多い病気「若年性白内障」が両目で発症。

美冠の手術から1年も経たない頃、今度は来実の左目が一晩で真っ白く濁り、緑っぽい目ヤニが出ました。
朝一番で病院の診察を受けましたが、「急を要する状態」という診断で、紹介状と電話連絡をしてもらい、眼科を専門とする動物病院に駆け込みました。

診断の結果、「若年性白内障」というアメリカンコッカースパニエルにとても多い病気であることが判明しました。
当初は点眼で回復を願いましたが、改善しないことから、手術の説明を受けました。
1歳半の来実の眼は、手術しないとだんだんと視力を失い、眼圧の高さから緑内障に移行して、失明の危険性が非常に高くなるという話でした。
さらには、目ヤニが出ていた左目だけでなく、右目も既に白内障を発症していると告げられ、頭をハンマーで殴られるようなショックを受けました。

ペット保険に加入しているということで、医療費負担の話はスムーズで、「眼膜を切開し人工レンズを入れる手術である」という点について、分かりやすく説明してくれました。
事前検査から手術、術後の安定まで当初は2週間の入院予定でしたが、眼圧が安定せず、結果としては約1ヶ月を病院で過ごしました。
その後、右目の手術も無事に成功し、来実の眼は両方とも濁ることなく見えるようになったのです。

手術後は、定期的な診察と毎日の点眼が欠かせなくなりました。
2010年に眼科専門医に支払った医療費は26万円以上でしたが、これは実費負担分であり、保険会社の補償額を合わせると、なんと50万円以上の医療費になったのです。

アメリカンコッカースパニエルのペット保険は、2009年当時で1頭30,000円弱(年額)、2頭目からは多頭割引600円が適用され、通院入院は回数無制限1日10,000円まで、手術は年2回、1回100,000円までの50%プランを利用していました。
現在、アメリカンコッカースパニエルは、さらに保険料が上がり、1頭64,540円(来実)60,710円(美冠)と7年の間に倍以上の保険料になっています。
同じ50%プランでも、通院入院は無制限から利用日数20日までに制限されています。

福島の被災犬を迎えることに。持病がある犬がペット保険に加入することの難しさ

2011年3月11日、東日本大震災と大津波は凄まじい破壊力で日本中を震撼させました。
被災者支援をしていた私は、被災した犬を里親として迎えられないかと考え始めていました。
そして、出会ったのが梓希(あずき)です。

その犬は、福島の被災地で1年近く放浪し、一人で生き伸びていたところを保護団体に保護されていました。
保護団体から送ってもらった画像では、綺麗にトリミングされて、かわいい顔をしていましたが、車を走らせて福島まで迎えに行くと、その時の梓希は画像と全く異なる風体になっていました。
この子は誰だと思うほど変貌していた梓希は、年齢や飼い主、どこに住んでいたのか、どんな飼われ方をしていたのか全く分かりません。
骨格や歯で医者に年齢を判断してもらい、健康状態を見てもらいました。
可能であればペット保険に加入したいと考えたからです。

先住犬のアメリカンコッカースパニエル2頭と同じペット保険会社にペット保険加入の可否を問い合わせました。
その条件は以下の通りです。
① 年齢が7~8歳ぐらいだろうという医者の診たてにより、2012年3月時点で8歳とする
② 犬種がわからないテリアMIXなので、体重から保険料の区分を決定
③ すでに罹患している疾病は保険金給付の対象外

見積もりの結果、年間保険料は41,850円になりました。
問題は、③の病気の件でした。
里親になって数日後に医者で診てもらった結果は、
「心臓に雑音がある」
「気管虚脱が原因で咳が出ている、手術しても繰り返す」
「皮膚疾患は原因が特定できず、痒くなったら服薬するしか方法がない」
「耳には既に完治している外耳炎跡がある」
との診断でした。
フィラリアも弱陽性であることから、陰性になるように服薬も続けなければなりません。

さて、このような症状の犬が保険に加入できるのかというと、結論から言えば「可能」です。
しかし、前述の疾患に関する治療やお薬、診察には保険が使用できません。
支払う保険料は高額なのに使えない疾患が多いのでは、掛け損になると判断をするしかありませんでした。
梓希は、ペット保険に加入せずに通院を続け、お薬を服薬しながら治療を続けました。

心臓雑音は服薬するほどでは無い事から様子見で良いとされ、気管虚脱も散歩の引き方を工夫するなど首に負担を掛けない方法で改善していきました。
皮膚が痒いのは、なるべく衛生的にするように心掛け、痒い時だけ服薬することで乗り越え、体や心臓に負担のないようにステロイド剤も最低限の処方に留めました。

梓希が我が家に慣れて落ち着いた2年後に、福島の保護犬をもう1頭受け入れ、聖希(ひじき)と名付けました。
この子はスコッチとダックスのMIXで、年齢は2歳と分かっていましたが、元気すぎるほどの健康体でしたから、梓希同様に保険には加入せず、現在まで2年間で診察を要する病気にはかからず、助かっています。

そして、また2年経った2016年9月1日、繁殖業者が放出したアメリカンコッカースパニエルの朱美(あけび)を迎え入れました。
まだ3歳ですが、すでに子宮と卵巣は無く(※)、左目にはチェリーアイがすでに変色している状態、外耳炎も放置されていて投薬治療が必要と診断されました。

(※)業者は「できものがあったから卵巣ごと摘出した」と言いますが、医者によると「繁殖業者が何度も出産させるので子宮が薄くなり破裂した可能性が高い」とのことでした。

この子はまだ3歳ですから、今後も大きな病気になる可能性が有ります。
しかし、現在の状態では保険加入の条件が難しいと判断して、朱美も保険加入していません。

長生きするようになったペット。医療費と保険、飼い主にとっては難しい選択も。

犬も人と同じように年齢とともに、いろいろな病気や不具合が生じる可能性が高くなります。

現在12歳になった梓希は、2年前に見つかった胆泥症(胆嚢・胆道閉塞あり)の投薬を続けています。
さらには、脳前庭障害が原因で徘徊も始まっています。
今年になって肝臓の数値が悪くなりましたが、現状の体力や心臓、体重から全身麻酔を要する検査はリスクが高いと判断され、CT検査やエコー検査は出来ません。
毎日の補液(自宅点滴)と胆泥症の服薬を続け、尿の異常があった場合には抗生物質やステロイド剤の服用で治療を続けています。

ペット保険に未加入の梓希12歳の医療費は月に約3万円弱、「保険に加入していれば……」とも悔やまれますが、加入前に多くの疾患を抱えている場合は、保険加入の条件が緩和されないと保険料に見合う補償が受けられないのが、現在のペット事情だと考えさせられます。

聖希(4歳)と朱美(3歳)については大手保険会社だけでなく、数社のペット保険を比較検討して考えています。

ペットも家族ですから、病気になれば医者に連れていき、医療費を掛けて大事にします。
その結果、ペットは長生きになります。
ペット保険に加入する人が増え、保険請求額が増え、年々保険料率がアップしているのが現状です。
「ペットにどれほど医療を受けさせるのか」
「ペットの医療費をどれほど負担するのか」
「ペット保険に加入するか、加入する場合どのように選ぶのか」
これらは飼い主にとって難しい選択を迫られる問題になっています。

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